11.25.06:00
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01.25.12:25
ギャンブルボックスの話〔1〕
チャットログ載せるだけのつもりで編集してたら何だかこんな感じになってしまった先日のギャンブルボックスのお話。第一回。
それは、ようするに箱だった。
「はこだー」
エリが見たままを叫んだ。
「ギャンブルボックス、ですです」
それを月海が、もうちょっと正確に言い直す。
手のひらに乗るくらいの小さなサイズのそれは、どう見てもただの箱で、これといって箱以外の何物でもなかった。
しかし、だ。
この場所において、それは、皆にとってのロマンなのかもしれない。
・・・あるいは、大いなる悲しみを招くもの、か。
私たちはこれを、ひとつの勝負事に使っていた。
「それじゃー、」
箱を眺めながら、私は皆に向かっていつもどおり、適当な感じで告げる。
「ギャンブルボックスでもやろうか。」
西地区の片隅にある、その小さな広場で思い思いにくつろいでいた住人たちが、それを機に一斉にその箱に注目した。
その場にいたのは私を含めて9人(正確には8人と人外1匹)、それぞれ思い思いに箱を眺めているのが分かる。
ひでつぐは、腕を組み軽く微笑みながら。
月海は、とても興味深そうにまじまじと。
ちかりは、ほんわかにこにこしながら。
リトは、好奇心のまなざしで。
エリは、戦いに挑む挑戦者の気配で。
梅は、状況を掴めずあわあわと。
ひかるは、・・・何故か広場の片隅につながれた牛の下に潜り込んで牛乳を直飲みしながら。
(多分えいえいおーとか言っているようだが、ごぼごぼという音が混ざってよく分からないのでとりあえず無視する)
そして、私の正面にいる通称ピンクの悪魔こと、凶悪隕石魔術師の楓は -
「がくがく。。。」
その箱を見るなり、定まらなくなった視線をあちこちにやりながら、何故か広場の隅へ移動し小さくうずくまって震え始めていた。
それを見やりながら、
「さて」
びくっ、っとうずくまっていた楓が大きく反応した。
私はにやりと不敵な笑みを浮かべながら続ける。
「誰から行こうか?」
私がそちらを見ながら告げたからか、皆の視線も自然とそちらに集中した。
「ぶるぶる。。。にゃ;;」
まだ幼い風貌にふわりとしたキレイな金色の長い髪、猫を模したピンクの可愛い衣装を着た彼女は、しかしてその姿に似合わず人並みはずれた強大な魔力を有した魔術師でもあった。
彼女が通う、国内でも選りすぐりの魔術師達が通う魔術学院であっさり首席をキープし続けるその実力はおそらくファンブルグ国内でもトップクラスだろう。
しかしそんなこいつにも苦手なものはある。
楓はおびえきった表情にうっすらと涙すら浮かべながらも、皆の視線に逆らえなかったらしくおそるおそる箱の前まで戻ってきた。
あきらめた楓が箱の前に座ると、私も箱をはさんでそのその正面に座り、他の奴らも箱を円状に取り囲むように、次々と座っていく。
ひとり座らなかったひでつぐは、とりあえず様子を見るらしく、近くの木にもたれ微笑みながらこちらを眺めていた。
皆の期待を裏切らないように、私は順番を促す事にした。あくまで皆のために、だ。
「じゃ、ピンクさんからどうぞ。」
思い切りの笑顔で、私は正面の楓に告げた。
「。。。。にゃあ;;」
皆の(嬉しそうな)視線に彼女は観念したらしく、恐る恐る箱の前に震える両手をかざした。
やがてかざした手のひらから、微かに魔力が流れだすのが分かる。
- その刹那、箱は眩いばかりの光を放ち始め
跡形もなく消滅した。
「。。。。」
「あっはっはっは」
私はたまらず笑い声をあげた。周りの皆も同様に笑っている。ひかるにいたっては「よしゃー」と叫びながら頭に張りぼてのような星をつけて(思いきり頭に突き刺さっているようにも見えたが)妙な踊りを踊っていた。
木にもたれて眺めていたひでつぐも「あはは」と小さく笑っていたが、何故かそれに敏感に反応した楓がちらっとそちらを見やると、何故か彼はごほごほと咳払いして真顔になっていた。何故かかわいそうなほどに青白い顔色になって。
一部勝手に設定やら順番やら脚色してますが、キャラのセリフ及びギャンブルボックスの結果は実際の出来事です。笑
多分あと2~3話、続きます。