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  • 11/25/01:54

01.26.19:26

ギャンブルボックスの話〔2〕

完全なる簓の脳内変換的な妄想の世界でお届けしております、ギャンブルボックスのお話。第二回。



この箱はギャンブルボックスと呼ばれる特殊なものだ。
稀にダンジョンなどで発見されるのだが、面白い性質をもっており、魔力に反応して変質する。
変質といっても見た目には色が変わるだけなのだが、厳密には素材そのものも変化しているらしい。
魔力を与える度に変質し(色も変わり)、変質すればするほど学術的に貴重な素材になるとかなんとかな理由から、10回近く変質に成功したものは非常に高値で取引される。

ただし、これにはもうひとつ特殊な性質があった。
魔力を与えた術者の魔力の質や量、その他もろもろの色々な条件が重なった場合。というか、大体の場合そうなるのだが。

今のようにキレイさっぱりと物質消滅を起こす。
私たちはたまにこれを見つけてくると、こうやってひとつの遊びとして使う。
順番に変質させていって、消滅を起こしたやつが負けというルールだ。
城の研究者や冒険者どもはもったいないなどとと叫ぶだろうが、私たちにはこの使い方で十分だった。
売って大金を得るのも悪くないが、こうやって仲間と笑い合う時間は金で買えるもんでもないからな。


「さて、次は・・・リトから行くか?」

リトは、若くして「あた食堂」の副料理長だ。最近西地区で流行っている「あた食堂」の料理長とは私も親しく、その縁から彼も最近よくこの広場に訪れるようになった。

言いながら、皆の中央に私は新しいギャンブルボックスを置いた。
今までのやりとりを好奇心をもって眺めていたリトは遠慮がちにこちらを見やり、しかし目を輝かせていた。
これをやるのは初めてらしい。
「ねぇ、なにかするの?」
同じく初めてなのだろう、エリが尋ねてくる。勝負事、というのは分かっていても、具体的なルールはわかっていなかったらしい。
「ああ、この箱にほんの少し魔力を込めるんだ。」
私は簡潔に説明する。
「そうすると、変質するか消滅する。だから、順番にこれをやっていって、消滅させたやつが負けってルールだな。」
「なるほどー」
エリは簡潔に返事を返すと、再び中央に置かれた新しい箱に視線を戻していた。
遠くでひでが「おもしろいなぁ」と呟いたのが聞こえた。ひかるはいつの間にか付近を通りすがった緑の獣人にむぎゅーと抱きついて噛みついていた。意味が分からない。
「リト、ひろってみな」
促され恐る恐る箱を拾うと、彼は目を閉じて手のひらの箱に意識を集中した。
やがて箱は光を放ち -見事に赤い色に変質していた。

おお、と一同から声が漏れる。
「やるなぁ」
ホッとした表情で、リトが箱を地面に戻した。
「じゃ、次はエリかな」
リトから時計回りに、私は順番を指定していく事にした。

エリは格闘家志望の女の子だ。
さっぱりとした性格で本人曰く「清純な乙女」らしいのだが、常に身軽な格好であちこち冒険しながら強いものを追い求めている。
そんな彼女がこの広場に辿り着いて私たちに出会ったのも、不思議な偶然だったのだろう。

エリはしばらく箱を睨み付けると、すっと右の手のひらを突き出し、魔力を流し始めた。
ほどなくして、箱は再び光を放ち -見事に消滅した。
月海が「あぁっ」と声をあげ、皆が軽く笑った。
エリはそのままのポーズで硬直している。割とショックだったのだろう。
「・・・むりだよー」
がっくりとうなだれると、エリは泣きそうな顔で膝を抱えた。
私の隣でちかりが「消えた~」と、にこにこ呟いていた。
まぁ、変質に失敗して消してしまった時の気持ちは良く分かる。
遊びとはいえ、何だか悲しくなるものだ。特に、立て続けに自分の番で失敗した時などは、もうその絶望感は計り知れないからな。
私は最後の箱を用意した。
順番通りにいくと、次のプレイヤーは今さっきそんな絶望感を味わったばかりだ。
エリのとなりはまた、楓だった。



 

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